デジタル庁発足、政府機関保有サイトの現在のWebパフォーマンス状況

デジタル庁発足後の省庁サイトのWebパフォーマンス状況

2020年12月、政府機関保有のgo.jpドメイン381サイトについてWebサイトパフォーマンス(表示速度・稼働率等)調査を実施しました。その後の状態について、一部サイトの追加調査を実施しました。

2021年9月のデジタル庁発足により、順次、省庁サイトのリニューアル、統合化がはかられると考えられますが、前回の計測から1年を過ぎた現在は、どのような状態なのでしょうか。

国民の関心度の高い4省を選定し、調査を実施しました。

関連コラム

2020年12月公開:デジタル庁発足に向けた政府機関保有サイトの管理の課題
2021年9月公開:デジタル庁発足、「人に優しいデジタル化」は実現するのか。公式サイトのパフォーマンス評価を実施
 

パフォーマンス結果

計測環境および条件

表示デバイス:Desktop(Windows PC)
表示ブラウザ:Google Chrome
回線:WIFI
計測拠点:東京
計測期間:2022年1月7日〜1月11日/60分間隔
計測ツール:Dynatrace Saas

評価指標

TTFB(Time to First Byte) ブラウザが最初のデータを受け取った時間(サーバー応答時間) 当社推奨値:0.1秒以内
Dom Interactive 画面がインタラクティブ(操作可能)になるまでの時間 当社推奨値:0.5秒以内
Dom Complete ページの読み込みが完全に完了したタイミング 当社推奨値:2秒以内
Load event end ページ読み込み完了後のロードイベントが完了したタイミング 当社推奨値:2秒以内
Visually Complete ファーストビュー表示速度 当社推奨値:1秒以内
表示速度(Action Duration※) 画面表示処理が全て完了したタイミング 当社推奨値:2秒以内

※ DynatraceのAction Duration指標を表示速度指標として採用しています。
 非同期処理であってもLoad event endまでに読み込みを始めるリソース場合、その処理の完了を含めた結果を返します。

4省庁のパフォーマンス結果(単位:秒)

計測値の単位は秒です。
当社推奨値に達しない結果は赤字表記としています。

政府広報オンライン

測定拠点 TTFB Dom Interactive Dom Complete Visually Complete 表示速度
2020年12月 0.05 2.17 5.39 5.40 5.40
2022年1月 0.08 0.86 2.80 3.18 3.36
差分 0.03秒増加 1.31秒減少 2.59秒減少 2.22秒減少 2.04秒減少

2021年1月にリニューアルされ、Webパフォーマンスが大きく改善しています。しかしながら、当社推奨値の多くは未達成であり、一般的に遅い、重いといえるサイトです。
政府の広報サイトであるため、UX指標の安定性の観測、急激なアクセス増への備え等、これからの改善が期待されるサイトです。

Visually Complete値の改善によるユーザ体感の向上が課題です。
また、本サイトは、表示速度の安定性に課題があります。計測期間中の最速表示速度は1.57秒から最遅表示速度11.4秒と開きがある上、計測値も安定しないものでした。

文部科学省Webサイト

測定拠点 TTFB Dom Interactive Dom Complete Visually Complete 表示速度
2020年12月 0.04 0.45 0.73 0.82 0.82
2022年1月 0.04 0.29 0.95 1.00 1.00
差分 差分なし 0.16秒減少 0.22秒増加 0.18秒増加 0.18秒増加

2021年3月にリニューアルされています。リニューアル前のWebパフォーマンスに大きな課題は見られず、またリニューアル後も、表示速度やUX指標となるファーストビュー表示速度など、当社推奨値を超える値はありませんでした。
しかしながら、cssファイルやjavascriptファイルなどが表示コンテンツの描画を妨げており、デバイスやネット環境などによっては遅さを感じるユーザもいるものと考えられます。
アクセスユーザのユースケースに合わせた改善が必要と言えるでしょう。

総務省Webサイト

測定拠点 TTFB Dom Interactive Dom Complete Visually Complete 表示速度
2020年12月 0.08 0.47 1.19 0.82 1.21
2022年1月 0.08 0.35 1.13 0.84 1.14
差分 差分なし 0.12秒減少 0.06秒/減少 0.02秒増加 0.07秒減少

リニューアル情報は確認できず、2020年末より大きな改編はないようです。
引き続き、表示速度やUX指標となるファーストビュー表示速度など、当社推奨値を超える値はありませんでした。
しかしながら、文部科学省Webサイトと同様に、cssファイルやjavascriptファイルなどによって表示コンテンツの描画が妨げられており、アクセスユーザのユースケースに合わせた改善が必要と言えるでしょう。

法務省Webサイト

測定拠点 TTFB Dom Interactive Dom Complete Visually Complete 表示速度
2020年12月 0.05 0.44 0.80 1.88 1.88
2022年1月 0.07 0.64 1.10 2.20 2.20
差分 0.02秒増加 0.20秒増加 0.30秒増加 0.32秒増加 0.32秒増加

2021年3月にリニューアルされています。表示速度やUX指標となるファーストビュー表示速度は当社推奨値を超え、リニューアル前よりパフォーマンス劣化したといえます。
画像ファイル数が多く、その最適化が不十分なようです。web表示に適したサイズ化、ローカルキャッシュ化などによりwebパフォーマンスの改善は十分可能です。
画像ファイルが多くなると、レイアウトのがたつきも生じやすく、Googleの新UX指標値であるCore Web Vitals値にも影響を及ぼします。

考察

政府機関保有サイト、とかく省庁サイトは今後も定期的にリニューアルされることでしょう。
多様なデバイスでの表示、多岐にわたる参照ニーズに応えるべく企画・ディレクションされていることはうかえるものの、表示速度やその安定性についての検討はまだ不十分であるといえます。
より多くの多様なユーザがストレスを感じることなくWebサイトへアクセスできるようWebパフォーマンスの視点も加え、今後のリニューアルに活かしていただきたいです。

各種お問い合わせやご要望は下記よりお願いいたします。

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