デジタル庁発足、「人に優しいデジタル化」は実現するのか。公式サイトのパフォーマンス評価を実施

新たな中央官庁、「デジタル庁」が2021年9月1日に発足しました。

平井大臣は、『デジタル庁は、一人ひとりの多様な幸せを実現する「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を目指す』とメッセージを発していますが、国民が安心して使える優しいデジタル化は実現するのでしょうか。

Gomezでは今回、デジタル庁発足と共に立ち上がった公式サイトをパフォーマンスの観点から評価しました。

対象とするページは、デジタル庁公式サイトのトップページGlobal Siteトップページ2ページです。公式サイトは主に国内から、Global Siteは海外アクセスも含め調査を実施しています。

尚、今回は、Gomezで活用を推進しているDynatraceのSynthetic機能を利用しました。
外形監視であるため、実ユーザのアクセスより速い結果がでやすいものの、常に同じ環境、条件で計測を行うため、表示の安定性の確認や潜在的なサイトの問題の発見に役立てることができます。

パフォーマンス結果

計測環境および条件

表示デバイス:Desktop(Windows PC)、Mobile端末(iPhoneX)
表示ブラウザ:Google Chrome
回線:WIFI、4G(Mobile端末のみ)
計測拠点:公式サイト(東京/大阪)、Global Site(東京/シアトル/シンガポール)
計測期間:2021年9月10日〜9月15日/30分間隔
計測ツール:Dynatrace Saas

評価指標

Dom Interactive 画面がインタラクティブ(操作可能)になるまでの時間 当社推奨値:0.5秒以内
Dom Complete ページの読み込みが完全に完了したタイミング 当社推奨値:2秒以内
Load event end ページ読み込み完了後のロードイベントが完了したタイミング 当社推奨値:2秒以内
Visually Complete ファーストビュー表示速度 当社推奨値:1秒以内
表示速度(Action Duration※) 画面表示処理が全て完了したタイミング 当社推奨値:2秒以内

※ DynatraceのAction Duration指標を表示速度指標として採用しています。
 非同期処理であってもLoad event endまでに読み込みを始めるリソース場合、その処理の完了を含めた結果を返します。

公式サイトのパフォーマンス結果(単位:秒)

当社推奨値に達しない結果は赤字表記としています。

Desktop(Windows PC)× WIFI

測定拠点 Dom Interactive Dom Complete Load event end Visually Complete 表示速度
東京 0.298 0.409 0.410 1.670 1.940
大阪 0.364 0.485 0.486 1.770 2.070
平均 0.331 0.448 0.449 1.720 2.010


Mobile端末(iPhoneX)× WIFI

測定拠点 Dom Interactive Dom Complete Load event end Visually Complete 表示速度
東京 0.282 0.399 0.400 0.773 2.060
大阪 0.364 0.484 0.485 0.875 2.180
平均 0.323 0.442 0.443 0.825 2.120


Mobile端末(iPhoneX)× 4G

測定拠点 Dom Interactive Dom Complete Load event end Visually Complete 表示速度
東京 0.319 0.670 0.671 1.110 2.340
大阪 0.393 0.762 0.763 1.260 2.540
平均 0.357 0.717 0.718 1.180 2.440


結果考察

国内からのアクセスが大半と想定し、東京、大阪の2拠点から計測しました。
Visually Complete、表示速度の結果が当社推奨値を下回る結果が多数見られました。
本サイトは、ノーコードでWebサイトを作れるSTUDIOというサービスを利用しており、このサービスからのCMS(非同期配信のためDom Compete値に影響を与えない)配信に時間を要していました。
CMS配信には、ビジュアルを構成する要素(画像)が含まれているため、Visually Completeが推奨値をクリアしなかったものと考えられます。

ページの読み込み完了を示すDomCompelte値が推奨値2.0秒よりかなり速いため、一見すると優れたパフォーマンス性能とみえますが、ファーストビューに表示されるべき画像の配信が遅い(Visually Complete値)ことで、画面表示に時間がかかっているように感じるユーザは多数いると考えられます。

また、測定値としては掲載しないものの、2021年5月にGoogleが新たな検索ランキングのUX指標として追加したCore Web Vital(コアウェブバイタル)の1指標である、Largest Contentful Paint (LCP)(※)についても、デバイスに関わらず、0.7〜1.0秒程の結果がでています。ページサイズが500kbもないサイトでは速いとは言い難い結果です。
Google Cloud PlatformCloud Strage管理の画像(同庁のロゴ画像)が対象のようですので、3rdパーティリソースの活用方法、利用する場合の適切なタイミングの設計が今後求められます。

※ Largest Contentful Paint (LCP)の推奨値としてGoogleは2.5秒を提示していますが、あくまで実ユーザを想定した推奨値であるため、外形監視測定の場合は、1.0秒程度を目標とすることを推奨しています。

Global Siteのパフォーマンス結果

当社推奨値に達しない結果は赤字表記としています。

Desktop(Windows PC)× WIFI

測定拠点 Dom Interactive Dom Complete Load event end Visually Complete 表示速度
東京 0.296 0.415 0.416 0.593 1.700
シアトル 0.702 1.630 1.630 1.970 3.630
シンガポール 0.497 1.140 1.140 1.300 2.750
平均 0.500 1.070 1.070 1.290 2.710


Mobile端末(iPhoneX)× WIFI

測定拠点 Dom Interactive Dom Complete Load event end Visually Complete 表示速度
東京 0.308 0.423 0.424 0.626 1.730
シアトル 0.685 1.570 1.570 1.860 3.560
シンガポール 0.498 1.150 1.150 1.330 2.850
平均 0.497 1.050 1.050 1.270 2.710


Mobile端末(iPhoneX)× 4G

測定拠点 Dom Interactive Dom Complete Load event end Visually Complete 表示速度
東京 0.331 0.690 0.691 0.991 2.050
シアトル 0.677 1.600 1.600 1.940 3.630
シンガポール 0.591 1.280 1.280 1.540 3.030
平均 0.533 1.190 1.190 1.490 2.900


結果考察

グローバルサイトは、英語表記であるため、国内外からのアクセスを想定し、東京、シアトル(USA)、シンガポールの3拠点から計測しました。
国内サイトと作り方、利用外部サービスに大きな変わりはなく、国内サイトと同様のUX最適化の課題を含みます。
アクセスする測定拠点とサーバーの物理的距離に比例して、表示速度が遅くなるのは当然と言えますが、CMSを活用するなど速度劣化の解消を、今後は目指していくものと考えられます。

また、海外拠点からのアクセス時、Dom Interactive値が増大していますが、これは、degital.go.jpドメインから配信されるJavaScriptファイルの処理遅延によるものです。国内アクセスが、0.0x秒台に対し、海外からのアクセスでは1秒以上かかる場合もあります。リソース毎のRequest/Responseに時間を要しているため、これらのCMS配信や圧縮/ファイルの統合などの最適化を検討する必要があります。

今後のデジタル庁に期待

サイト全般、非常にシンプルで無駄のないサイトです。
ノーコードでサイトが作れるサービスを利用しているものの、UIは極めてシンプルであり、また、表示パフォーマンスを劣化させる最大の要因である表示サイズも小さく、アクセスユーザーを意識し作っていることがわかります。

その一方で、表示パフォーマンスがユーザアクセスに与える影響については、まだ十分な考慮がされておらず、現時点では、「人に優しいサイト」とは言えません。

新たに新設されたデジタル庁、国民が安心して利用できるデジタル化に向けたDX推進も加速するものと期待しています。

各種お問い合わせやご要望は下記よりお願いいたします。

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