スーパーアプリの台頭によるデジタル投資の変化
注力すべきはサイトかアプリか
企業のデジタル担当者がいつも頭を悩ませているのは、「スマートフォンへの対応としてサイトかアプリかどちらに注力すべきか」です。
これまで議論されてきたそれぞれのメリットとデメリットの代表的なものは、サイトのほうが構築や運用はしやすいが、アプリのほうがUXや継続利用に優れる、というものでした。
サイト | アプリ | |
適用技術 | HTML,JavaScript,PHP,JAVA等 | Java,Objective-C,Swift,React Native等 |
開発工数 | 低~中 | 中~高 |
メリット | 更新が用意、自由な掲載内容、検索性に優れる | パーソナライズ性に優れる、通知しやすい、通信速度が速い、端末機能を活用しやすい |
デメリット | パーソナライズ化するには会員登録などが必要、にせサイトを防げない |
初回ダウンロードが必要、リリースに審査が必要、更新の手間がかかる |
集客ポイントの変化
サイトはいわゆるSEO対策を施すことにより、新規顧客の集客がしやすい一方で、結局は広告による集客に頼らざるを得ないのは、サイトもアプリも同様です。
ところが、古い言い方でいえば「ポータル」が興隆してきたことにより、それらの集客力に自社が太刀打ちすることができなくなっています。
これはちょうどECサイトが楽天に集約されていった流れと似ています。自社でECサイトを持ち集客する一方で、楽天市場にも出店しその集客力を活用することの比較です。
もちろん、それらプラットフォーマーへの手数料はかかります。それと自社サイト・アプリ運営の投資額との見合いを常に意識することが大事です。
集約されつつあるサービスの例
動画 | Youtube |
ライブ配信 | Youtube、Instagram、17Live |
ショッピング | Amazon、楽天 |
グルメ | tabelog、ぐるなび |
旅行 | 楽天トラベル、じゃらん |
コミック | コミックシーモア、めちゃコミック |
自社でのアプリとサイトの重複対応の解消
自社サービスの展開において自社サイトを手放すのは相当な決断が必要です。
一方、自社アプリを手放す、またはサイトとのハイブリッド型としてアプリを提供し、運営の負荷を減らすことは、決断がしやすい内容でしょう。
その投資額を別の集客活動にまわし、プラットフォーマーへの誘導や自社サイトへの誘導につなげることでカバーできるからです。
例えば、縦型動画で有名なC-channelは、SNS経由での集客で十分とのことでアプリの提供を取りやめました。
https://www.cchan.tv/
このような経営側にとっての効率化は今後も増えていくものと思われます。
プラットフォーマーに情報や収益を握られることへの注意
「サイト」は、W3Cが規定した方針に沿って、誰でも立ち上げられるものです。技術としても公的なものであり、W3C自体は収益団体ではありません。
一方「アプリ」は、現在ではGoogleとAppleという一企業が技術方針やサービス提供方針を決めており、利便性を武器として巨大な集客力があることによって成り立っているものです。
従って、仮にプラットフォーマー企業が自社の事情により方針転換した場合は、事業者側としては抵抗する手段を持ちえません。プラットフォーマーに従うしか、これまで通りのサービス提供はできなくなるのです。
その意味でも基本的には公的な位置づけである「サイト」を中心と据えつつも、プラットフォーマーに利用されるのではなく、プラットフォーマーを利用するのだという能動的な対応として「アプリ」を立ち上げ、純粋に費用対効果の観点でアプリから撤退する、というのが本来のデジタル事業運営の姿であるでしょう。